宍粟市の藤無山に源流を発する揖保川は、播磨五川のひとつ。穏やかな水流は播磨灘に注ぎます。川面からは鮎や水生昆虫の姿をみることができ、特に揖保川で育つ鮎は大きいと釣り好きの間で人気のスポット。この地の特産である手延べそうめんや淡口醬油の誕生を支えた一級水系の河川としても知られ、今でも「播磨の名水」と呼ばれ重宝されています。
港として1300年の歴史を誇る室津港。奈良時代に編纂された『播磨国風土記』に「コノ泊、風ヲ防グコト室ノゴトシ」と記されているように、穏やかで静かな漁港であることから「室の如く静かな津」と呼ばれ、「室津」という名が付いています。江戸時代には参勤交代に向かう大名が多く訪れ、当時は日本最大の宿場町として栄えました。今でもこの港で養殖された牡蠣を求めて訪れる人は多く、身がしまり大粒の牡蠣を楽しんでいただけます。
鶏籠山(けいろうさん)山頂にそびえる山城と山麓の平山城の二期に分かれる龍野城。山城は約500年前、初代城主である赤松村秀によって築かれました。現在は本丸御殿、白亜の城壁、多聞櫓(たもんやぐら)、埋門(うずみもん)、隅櫓(すみやぐら)などを復元しており、城下町たつのの風景を象徴しています。城下は五万三千石の脇坂藩の名残である、旧脇坂屋敷周辺の白壁がノスタルジックな町並みを演出し、かつての繁栄を想起させます。また、如来寺境内には、龍野を代表する童謡作家である三木露風の歌碑と筆塚が残されており、歴史と童謡のふるさとたつの市を感じていただけます。
たつの市は花街として栄えた時代がありました。江戸時代前期には室津にも既に花街が存在したという記録が残されており、たつのを訪れた商人をもてなしていました。全国的に花街が多く登場した明治時代には、たつの市も小都市ながら多くの芸妓が集まり、たつの市の繁栄に花を咲かせていたとされています。また、花街の面影が残る龍野の地は国民的人気映画『男はつらいよ』の第17作目「寅次郎夕焼け小焼け」の舞台にもなっており、映画の中でかつてのたつのの町を見ることができます。たつのを訪れるときは、寅さんの歩いた道を探してみるのも楽しみ方のひとつです。